【中国税務】PEシリーズ⑤:PE課税が行われる場合に企業所得税額はどのように計算されるか?
これまでのコラムで、どのような場合にPE認定がなされるかについて解説してきましたが、今回は、実際に、PE認定を受け、企業所得税を納付しなければならなくなった場合に、どのように税額が計算されるのかについて説明したいと思います。
1.企業所得税額計算の基本的な考え方
中国の企業所得税については、税率が25%と規定されています。したがって、課税所得を計算した上で、当該課税所得に対して25%を乗じることにより企業所得税額を計算するというのが基本的な考え方になります。ただし、PE認定される場合というのは、そもそも企業所得税を納付する必要があると考えていなかったにもかかわらず、中国税務機関からの指摘によって想定外の納税が必要になるケースがほとんどであると考えられます。その場合、会計帳簿を作成して所得を計算していないことが通常ですので、どのように課税所得を計算するのかが問題となります。以下では、会計帳簿を作成しているケースとそうでないケースに分けて課税所得の計算方法について懲戒致します。
2.会計帳簿を作成している場合(実額課税)
会計帳簿を作成している場合には、通常どおり、収益(益金)から売上原価・費用(損金)を差し引く形で課税所得を計算すればよいことになります(実額課税)。ただし、租税管理法及びその関連法規に基づいて会計帳簿を設置し、合法的かつ有効な証憑に基づいて課税所得を計算しなければならないこととされています。
したがって、一般的な企業と同様の水準で、証憑を収集して会計帳簿を作成することが求められていることになりますが、上述のとおり、そもそも納税が必要と考えていない場合に、そのような対応を行うこと(実際の課税所得を計算すること)は難しいと考えられ、ほとんどのケースでは、以下に記載するような課税所得を推定計算する方法を選択せざるを得ないことになります。
3.会計帳簿を作成していない場合(査定利益課税)
会計帳簿を作成していない場合には、税務機関が以下のいずれかの方法から選択して、課税所得を計算することができるものとされています。
(1) 収入総額により課税所得を計算する方法
課税所得=収入総額×査定利益率
(2) 原価費用により課税所得を計算する方法
課税所得=原価費用総額÷(1-査定利益率)×査定利益率
(3) 経費支出により課税所得を計算する方法
課税所得=経費支出÷(1-査定利益率)×査定利益率
いずれも合理的に把握できる金額(収入・原価費用・経費支出)に対してこの程度の割合の利益が出ているであろうとの前提のもと、課税所得を計算する公式とされており、かなり大雑把に課税所得が計算されることになります。
4.適用される査定利益率
上記3.の3つの公式では、いずれも「査定利益率」が登場していますが、こちらは税務機関が査定して決定される利益率という意味になります。ただし、下表のとおり業種によってある程度の範囲が定められています。
業務内容 | 査定利益率 |
---|---|
工事作業請負・設計及びコンサルティング | 15~30% |
管理サービス | 30~50% |
その他の役務又は役務以外の経営活動 | 15%以上 |
一応、上表の範囲で査定利益率を決定することが規定されていますが、税務機関の判断によっては、より高い査定利益率とすることも認められていますので、あくまでも査定利益率の目安という位置づけとなります。
5.数値例
例えば、提供している管理サービスについてPE認定を受けるとする場合であって、経費支出に基づいて企業所得税額を計算すると仮定した場合、以下のような流れで企業所得税が計算されることになります。
経費支出額 | 120万元 |
---|---|
査定利益率 | 40%(30%~50%の範囲で税務機関が決定) |
課税所得 | 120万元÷(1-40%)×40%=80万元 |
企業所得税額 | 80万元×25%(企業所得税率)=20万元 |
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