【中国法務】外商投資法シリーズ④:外商投資安全審査制度
日本を含む外国から中国への出資については、国家の安全に悪影響がある可能性があることから、そのようなおそれがある投資に対して審査(「安全審査制度」)が行われています(「外商投資法」35条)。
この安全審査制度については、「外商投資安全審査弁法」(「弁法」)に詳細が規定されていますので、今回はその内容についてご説明致します。
1.安全審査制度の対象
安全審査制度の対象となるのは、外国投資者による、下記①~③を含む中国国内での直接又は間接の投資活動(弁法2条)が、下表の投資分野及び投資レベルに該当する場合です(弁法4条)。
① 中国国内投資プロジェクトの立上げ又は企業の設立
② 国内企業の持分又は資産の買収
③ その他の方法による国内投資
投資分野 | 内容 | 投資レベル |
軍事投資 | 軍事関連の分野・施設(周辺地区を含む)への投資 | 全ての投資が対象となる=持分比率等を問わない |
その他の重要投資 | 国家の安全に関係する重要又は重大な農産品・エネルギー及び資源・装備製造・インフラ施設・運輸サービス・文化産品又はサービス・情報技術及びインターネットに係る製品又はサービス・金融サービス・中核技術等の分野への投資 | 実質支配権(下記(ⅰ)~(ⅲ))を取得する投資のみが対象となる (ⅰ)50%以上の持分保有 (ⅱ)董事会・株主会等の決議に重大な影響を及ぼしうる表決数の保有、又は (ⅲ)経営上の意思決定・人事・財務・技術等に重大な影響を及ぼしうるその他の状況 |
2.審査手続
安全審査制度の審査は、国家発展改革委員会に設置された事務局(弁法3条)によって次の手順で進められます。
① 外国投資者が事務局に審査を申請する。
② 事務局は、申請資料が提出された後15日以内に安全審査を行うか否かを決定する(弁法7条)。
●審査を行わないと決定された場合、当該決定時に投資実行が可能となる。
③ 審査を行うと決定された場合、一般審査(30日間)が行われる(弁法8条)。
●国家の安全への影響がないと認められた場合、その時点で投資実行が可能となる。
④ 一般審査において更なる検討が必要と判断された場合、特別審査(60日間)が行われ、許可、条件付許可又は禁止決定が下される(弁法9条)。
以上のとおり、安全審査制度の申請の要否は外国投資者が自ら判断する必要がありますが、審査対象の一つである「その他の重要投資」の範囲が非常に広いため、判断に迷われるケースも多いのではないかと思われます。その判断に際しては、次の点にご留意ください。
① 判断に先立ち事務局に事前相談することが可能です(弁法5条)。
② 事前相談を経ずに申請不要との判断する場合、次のリスクに留意する必要があります。
(ⅰ)第三者が事務局に審査を行うよう提案する可能性がある(弁法15条)。
(ⅱ)審査対象の投資について申請を行わずに実行した場合、申請実行命令、原状回復命令等が課され得る(弁法16条)。
(ⅲ)当該命令等の状況は国家信用情報システムに記録される(弁法19条)。
③ 申請が必要と判断された場合、審査期間を前提にスケジュールを組む必要があります。
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