【中国税務】PEシリーズ③:中国現地法人の出向者がPEとみなされるか?
これまでのコラムでも記載していますが、PEとは事業を行うための拠点という意味です。中国現地法人は、中国で設立され、法人格を有している企業ですので、当然に中国で課税を受けることになります。問題となるのは、出向者の出向元である日本企業(中国現地法人の親会社)が、出向者を派遣することにより、中国にPEを有しているとみなされるか否かという点です。
通常、出向者は出向先である中国現地法人のために業務を行います。しかし、出向元である日本企業(中国現地法人の親会社)との関係が切れているわけではありませんので、場合によっては日本企業のために業務を行うこともあり得ます。出向者の派遣に際しては、中国現地法人から日本企業に出向者負担金を支払うことが一般的ですが、出向者が日本企業のために行った活動によって得られた利益を出向者負担金として日本企業に還流することもあり、そのような場合には、出向者が中国国内における日本企業のPEであるものとみなされ、課税を受けることがあります。
今回は、どのような場合にPE課税を受けるのか、PE課税を回避するためにはどのような点に留意する必要があるかについて説明したいと思います。
1. 実質的な雇用者の判断
出向者が中国現地法人のためにのみ業務を行っている場合には、何ら問題は生じませんが、出向元である日本企業のために業務を行い、その結果、日本企業に所得が生じるとすれば、PEの問題が生じうることになります。そこで、実質的な雇用者は誰なのか?を判断することが非常に重要となります。
(1)中国とシンガポールとの間で締結されている租税条約の解釈に関する通知
前回のコラムで、中国とシンガポールとの間で締結されている租税条約の解釈に関する通知について紹介しておりますが、この中で、以下のいずれかのケースに該当する場合に、PEを有するものとみなされることが規定されています。
① 親会社が出向者に対する指揮権を有しており、かつ、リスクと責任を負担していること ② 子会社に派遣される出向者の人数と基準が親会社によって決定されていること ③ 出向者の給与を親会社が負担していること ④ 子会社に派遣された出向者の活動によって親会社が利益を得ること |
以上のような状況で、親会社が合理的な範囲を上回る関連サービス費用を子会社から受領している場合には、中国で企業所得税が課されるものとされています。
なお、中国国内に子会社を有しているだけでPE認定をされたりすることはなく、また、子会社からの要求にしたがって親会社から出向者が派遣されており、子会社が出向者に対する指揮権を有し、かつ、リスクと責任を負担しているような状況であれば、PEとされることはない旨も合わせて明確にされています。
(2)出向者の中国国内における役務提供に係る企業所得税の徴収に関する通知
上記(1)の通知が出された後に、実質的な雇用者は誰か?についてもう少し具体的な判断基準が示された通知があります。まず、同通知では、以下の要件を満たす場合に、中国国内にPEを有するものと規定しています。
① 派遣企業(親会社)が出向者の業務の結果に対して、一部又は全部のリスク・責任を負う ② 派遣企業(親会社)が出向者の業績評価を行う |
その上で、以下のような5つの要素によって、より具体的に上記①②に該当しているかを判断するという建付けになっています。
a. 役務を受け入れる中国企業(子会社)が出向元(親会社)に対して、管理費・サービス費の性質を有する金員を支払うこと b. 子会社が親会社に支払う金額が、親会社が出向者に支払う金額(賃金給与・賞与・社会保険料・その他費用)を超えること c. 親会社が子会社から受領した費用全額を出向者に支給せずに留保すること d. 子会社が負担する出向者の賃金給与・賞与等の全額について、中国で個人所得税を納付していないこと e. 子会社が出向者の人数・職務資格・給与報酬基準と中国における業務場所を決定すること |
子会社が親会社に対して出向者負担金を支払うことは一般的ですので、それ自体が問題となるわけではありませんが、子会社から親会社に支払われた出向者負担金については全て出向者に対する賃金給与・賞与等として支給される必要があり、そうでない場合には、親会社に利益が生じているものとして課税を受けるリスクがあることになります。
2. PE課税を回避するための留意点
上記1.(2)で紹介した通知の中で、税務局は以下のような内容を確認して、PE課税を行うか否かについて決定するものとされています。
① 親会社・子会社・出向者の間で締結された契約書(出向契約書・雇用契約書) ② 出向者の職責・業務内容・業務査定・リスク負担等の具体的な規定を含む、親会社又は子会社の出向者に対する管理規程 ③ 子会社が親会社に支払金額、これに関する会計処理、出向者個人所得税の申告納税資料 ④ 相殺取引、債権放棄等によって子会社から親会社に対して支払われた費用が隠蔽されていないか |
出向者に対する給与については、子会社が親会社に対して出向者負担金を支払い、親会社から出向者に対して支払うという形態がとられることもありますが、本通知によってPE課税されるリスクを低減せるという観点からは、子会社ら支給される出向者負担金については、中国で(人民元で)直接出向者に負担する(親会社を経由しない)方が良いと思われます。
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