【中国法務】VIEスキーム
前回のコラムでは、外商投資参入特別管理措置(「外資ネガティブリスト」)に基づく外資規制(業種によって外資が禁止又は制限されること)があるとの説明をしました。しかし、実務上は、これらの規制を回避するため、VIE(Variable Interest Entity;変動持分事業体)というスキームが利用されることがありますので、今回はVIEスキームについてご説明致します。
1.VIEの概要
VIEとは、外国投資者が中国でWFOE(Wholly-Foreign Owned Enterprise;外資100%子会社)と呼ばれる100%子会社を設立し、WFOEを通じて中国内資の事業会社を実質的に支配し、利益を吸い上げるスキームをいいます。VIEは、当初、外資規制の対象である事業(例えば、インターネット関連事業)を行っている中国の会社について、外資規制を回避して海外投資家からの投資受入れを可能とすることで米国等の海外上場を果たすためのスキームとして考案されたものです。その後、VIEは、電信業務、オンラインゲーム、広告業務等の外資規制分野への投資にも利用されるようになりました。
2.VIEの構造
VIEの構造は、外国投資家が、①中国でWFOEを設立し、②中国人個人(通常、外国投資者の中国籍従業員)に中国で事業会社を設立させ、③当該中国人個人との間の契約を通じて事業会社を実質的に支配し、④WFOEを通じて事業会社の利益を吸い上げる、というものです。上記①~④の詳細は次のとおりです。
① 外国投資者が、中国でコンサル、システム開発等を行う外資企業(WFOE)を設立する。
② 外国投資者が、中国人個人に中国で事業会社を設立させる。
③ 事業会社の設立に当たって、外国投資者又はWFOEが、中国人個人に対し事業会社の資本金相当額の資金を貸し付ける一方、事業会社の出資持分について質権やコールオプションを設定し、事業会社の運営について外国投資者又はWFOEの同意を要する旨の誓約や委任状を中国人個人から取り付けることにより、事業会社の実質支配権を確保する。
④ WFOEが事業会社に対しコンサル、システム開発等を提供する旨の契約を締結することにより、事業会社の利益を吸い上げる。
3.VIEのリスク
(1) VIEの適法性が否定されるリスク
実務上、現時点でVIEの適法性を否定した法令や処分は見当たりません。しかしながら、一部の外資規制対象事業について外資規制の潜脱を牽制する規定が存在しており(下記(ⅰ)及び(ⅱ)参照)、VIEの適法性については不透明な状況が続いています。
(ⅰ)「外国投資者による付加価値電信業務の投資経営の管理の強化に関する通知」1条2項:
国内の電信会社は、形式の如何を問わず、外国投資者に対し電信業務経営許可証を偽装して貸与、譲渡又は転売してはならず、外国投資者が国内で電信業務を違法に経営するために、資源、場所、施設等の条件を提供してはならない。
(ⅱ)「オンラインゲームの事前審査認可及び輸入オンラインゲーム審査認可の管理の更なる強化に関する通知」4条:
外国投資者は、他の合弁会社の設立、関連契約の締結又は技術支援の提供等の間接的な方法により、国内企業のオンラインゲーム運宮業務を実質的に支配し、又は当該業務に参加してはならない。
そのため、将来的に中国当局がVIEの規制に乗り出すリスクは少なからず存在します。そこで、対中投資においてVIEスキームを採用する場合には、VIEが外資規制の潜脱とみなされるリスクを極力回避するため、①実際にWFOEが事業会社に役務を提供していること、②事業会社からWFOEに支払われる対価が適正価格であること、といった実体を確保しておくことが望まれます。
(2)中国人個人が事業会社を私物化するリスク
VIEにおいて事業会社の出資者となる中国人個人を拘束するのは外国投資者やWFOEとの契約関係のみであるため、中国人個人が当該契約を反故にして事業会社を私物化するリスクも否定できません。
当該リスクをできる限り回避するためには、次の対策を採っておくことが考えられます。
① 事業会社の営業許可証、社印等を外国投資者やWFOEが保管する。
② 質権設定契約については、契約締結後直ちに当該契約の登記手続を行う(中国法上、質権設定契約は登記によって効力が生じることとされています)。
③ WFOEと事業会社の間の必要な設備や知財の提供契約については、それらの所有権を外国投資者・WFOE側が保持し続けられるよう、ライセンス、リース等の形で供与する。
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